本作の撮影場所は、広島県福山市にあった日本最古級の映画館「シネフク大黒座」。
取り壊しが決まった劇場の雄姿を何とか映像に残したい―。
劇場関係者の熱い思いに、広島在住の映画監督時川英之が応え、本作が誕生した。撮影終了前に重機が劇場内に入ってくるなど、ギリギリのスケジュールを縫って撮影された。
老舗映画館の大黒座が閉館することになった。
そこで働き始めたばかりの新入社員 明日香(藤原令子)は、ある夜、館内で謎の老人に出会うが、彼は奇妙な言葉を残し、忽然と消えてしまう。
バーテンダーのアキラ(本郷奏多)は、いつか自分の映画を作りたいと夢見ている。大黒座の女性支配人(石田えり)は、閉館への反対を押し切って気丈に振る舞っていた。泣いても笑っても、もうすぐ、大黒座はなくなってしまう…。
劇場の壁という壁が、町の人々が書いたメッセージで埋まっていく。そしてついに閉館の日。スクリーンに最後の映画が映しだされると、明日香の前に、あの謎の老人が再び現れ…。長い歳月の間、人々に愛されてきた映画館が、最後にくれたサプライズとは―。
1892年開館、2014年8月閉館。
当初は芝居小屋で、徐々に映画館に移行した。昔は上映後は必ず拍手がおこり、最盛期の1960年代は40万人を動員、深夜まで1日7回上映したこともあったという。
本作に出てくる閉館セレモニーや工事は、実際の映像を利用。館内の壁に観客が残した思い思いの手書きメッセージもすべて本物を撮影した。